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令和5年度 卒業式 学長告辞

2024年3月22日更新

卒業式

告辞に先立ちまして、今年1月1日に発生した能登半島地震で亡くなられた方々に深く哀悼の意を表し、御遺族と被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

本日、卒業式を迎えられた482名の皆さん、ご卒業まことにおめでとうございます。お茶の水女子大学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。

今年度の卒業式は、コロナ禍以前の方式に戻し、3学部合同で卒業式を執り行う運びとなりました。これまで皆さんの学びや生活を励まし、支えてくださったご家族の皆様にも会場にお越しいただき、こうして盛大に卒業式を挙行できますこと、あらためて深く御礼を申し上げます。なお、会場にいらっしゃれなかったご関係の方々のために後ほど式典の様子を限定配信する予定です。

思い起こしますと、まさに4年前、皆さんが本学に入学される直前に起こった365体育投注感染症のパンデミックによって私たちの生活は大きく変わることになりました。特に、当時新入生だった皆さんにとりましては、1年次の4月から6月にわたる大学閉鎖の措置により大学に入構することが叶わない状況となり、学生生活への影響は甚大だったことと思います。入学式の中止をはじめ、オリエンテーションや授業はオンラインになり、サークル活動や学校行事などに際しても、感染防止のため、それまで当たり前にできていたことができなくなるなどの経験をされました。対面での授業や活動が再開されても、感染防止のため「距離を取ったマスク越し」という、コロナ禍前の私たちが全く予想もできない大学生活を過ごされ、留学を躊躇された方、つらく悲しい思いをされた方もいらしたことでしょう。そんな皆さんを励ましたいとの思いから、2年生への進級時にあらためて「入学者進学式」を行い、大学教職員や卒業生から歓迎のメッセージをお送りしたことを覚えていてくださる方もいらっしゃることと思います。そして皆さんは戸惑いや不安に満ちた大学生活の中でも自らの道を見つけ、一歩、一歩、大切に日々を歩む努力をされて今日の日を迎えられました。ご自身でも気づかれないうちに将来皆さんが困難にぶつかられた時に乗り越えていく力になる多くのことを学ばれたに違いありません。私はそんな皆さんを誇りに思い、心からの敬意を表したいと思います。

現代は「アントロポセーン(人新世)」と言われ、私たちは気候変動、人口問題など様々な地球規模の課題を抱えています。さらには、ウクライナや中東地域に見られるように世界の平和が脅かされるような状況と私たちは向き合い、普遍的な平和が切実に願い求められる時代に生きています。そのような中、卒業という新しい始まりの時を迎えられた皆さんは、大きな喜びとともに多少の不安を胸に、進学、就職などそれぞれの新たな道を歩んでいかれることと思います。本学での専門分野の学びとともに、自然科学、人文科学、社会科学など、全人格的なトレーニングとも言える「文理融合リベラルアーツ」の学びによって得られた課題解決能力が、予測しがたい未来を生き抜いていかなければならない皆さんにとって、新たに出会う人びとの多様性に適応し、共感と信頼をわかちあう力になってくれることでしょう。

一方で、これからの世界には、課題とともに、人が切り拓く新たな知的?情的世界への多くの期待もあります。たとえば、「情報通信?AI?ロボット技術の進歩」、「宇宙や生命の起源の解明の進歩」、「人類が宇宙へ気軽に行けるようになる時代に向けた期待」、「国連が提唱するSDGsのような自然界とも融和した社会体制の提案」など、様々な新しい価値の創造が期待されます。そして、まさに女性の力が、社会に多様な視点を取り入れ、未来を切り拓くイノベーションを加速させると言われています。私は、皆さんがお茶の水女子大学で学ばれた知識や経験を基盤に、ご自身が好きなこと?したいこと、ご自分ができること、そして社会が皆さんに求めていることとしっかり向き合って、連帯し責任を持って、たおやかな生活世界実現への道を力強く歩んでいっていただきたいと思っています。

皆さんよくご存じのように、日本では女性の社会進出が強く求められ、進められてきた一方で、ジェンダー平等は諸外国と比べていまだに大きく遅れています。政治、経済分野への女性の参画が少なく、特に管理職等重要な決断をする立場に就いている女性が少ないこと、理工系分野での女性の活躍が遅れていることが指摘されています。

お茶の水女子大学は、未だ女性の社会進出が困難であった時代、明治8年、1875年に女性のための日本初の高等教育機関「東京女子師範学校」として設立されました。その後、女子高等師範学校、東京女子高等師範学校として、女子教育を先導してまいりました。第二次世界大戦後の昭和24年、1949年には、新制大学「お茶の水女子大学」となり、今から1年半後の2025年11月には、創立150周年を迎えます。その歴史を通して多くの卒業生が広く国内外において活躍してきました。そのような伝統と歴史を背景に、お茶の水女子大学は国立の女子大学として、リーダーシップを発揮できる女性の教育を使命としてきました。

1週間前に本学で開催した女性学長国際シンポジウムで講演され、有志の学生の皆さんのプレゼンテーションにも参加してくださったアメリカの協定校ヴァッサー大学のエリザベス?ブラッドレー学長からは、Women being educated at Ochanomizu University are very much advanced and cutting edge. という本学の教育への高い評価をいただきました。本学を卒業される皆さんには自信を持って、これまでになかった新しい視点や価値観を示し、グローバルに、より良い未来を切り拓くリーダーとして、内に閉じこもることなく活躍し、社会の多様性と包摂性、そして衡平性、つまりDEIの目的実現に向けて貢献していただきたいと心から願っています。

卒業生の皆さんには、志をともにした友人、どんな時も皆さんを信頼し励まし支えてくださったご家族、本学教職員など関係する多くの方々への感謝の気持ちを忘れずにいていただきたいと思っています。卒業生のネットワークである 同窓会『桜蔭会』も、奨学金やコロナ禍での学修支援金など様々な形で皆さんの在学中の学びを支え応援してくださいました。桜蔭会のご助力で正門の門扉の復元、図書館の増改築、屋外エレベーター棟の設置、附属高等学校や理学部、文教育学部の改修など、キャンパス整備も実現しました。今日卒業される皆さんがお茶の水女子大学の歴史をつなぐ桜蔭会員の一人として、これからも大学とともに歩んでくださったらとてもうれしく思います。

皆さんがこの学び舎から向かわれる新たな世界は、皆さんの活躍を待ち望んでいるに違いありません。未知の広がりの中で多様な価値観が交わり、時に対立する状況に身を置き、そこで自らの立場をはっきりと見出すには困難が伴うこともあるでしょう。そのような時には本学での学びを活かし、さらに研鑽を積んで身につけられた能力を発揮されることを心から願っています。そして、もし必要があればリスキリングのためにいつでも大学を再訪され、更なるエンパワーメントを成し遂げ、それぞれの立場でリーダーシップを発揮され、社会に貢献し、平和で持続可能なより良い未来を切り拓いていっていただきたいと思います。

本日は、4年ぶりの3学部合同の卒業式に晴れ晴れとした思いが募りますが、ここに改めてご卒業をお祝いし、皆さんお一人おひとりの未来が幸せで輝かしいものとなりますことを願い、告辞といたします。

本日はまことにおめでとうございます。

お茶の水女子大学
学長 佐々木 泰子